大嫌いだったのに・・・。



私は、アイツとは、本当に仲が悪くて、喧嘩なんて、日常茶飯事だった。
でも、大体、私が負けて、私が1人で腹を立てていた。
「(もう、ムカツク〜!!)」
そんな私を見て、滝は言った。
「喧嘩するほど、ってやつ?」
違うから。



私は、いつもアイツにからかわれていた。
でも、私がからかうことは無かった。・・・と言うより、からかえなかった。
「(絶対、アイツの弱点、探し出してやる!)」
そんな私を見て、ジローは言った。
「楽しそうだねー。」
どこが?



私は、アイツと同じクラスだった。
ある日、アイツが教室の自分の席で、静かに読書をしていた。
「(何の本だろう?私も本、好きだし聞こうかな?)」
そんな私を見て、宍戸は言った。
「お前。いつも見てるよな。」
気のせいだから。



私は、アイツと部活も委員会も一緒だった。
だから、2つの用事を一気に片付けようと、私はアイツに相談していた。
「部活のメニューは、任せるわ。その代わり・・・。」
そんな私達を見て、向日は言った。
「お前ら、何でも一緒で仲いいんだな。」
偶然なんだけど?



そして、挙句の果てに、忍足にこんなことを言われた。
「自分。跡部のこと、好きやな〜。」
何を根拠に?



跡部景吾。

私がマネージャーをやっている部活の部長で、私が副会長をやっている生徒会の会長。

おまけに、顔は整っていて、テニスも全国レベルに上手く、スポーツ万能。
得意な科目は、全教科(特にギリシャ語・ドイツ語)の天才。

まぁ、これだけだったら、モテてる理由もわかる。

だけど、性格がとんでもなく、最低。
自意識過剰、自己中心的、いわゆる『俺様男』なのだ。

「俺様の美技に酔いな」 「俺様がルールだ」

そんな彼の“ため息さえ、甘い嘘”に騙されて、落ちていく女が続出。



ありえない。こんな奴が好きだなんて。

なのに、私はどうして泣いているんだろう。
アイツがいなくなって、清々してるはずじゃない。
・・・きっと、張り合う相手がいなくなったからだ。

『喧嘩するほど、ってやつ?』 『楽しそうだねー。』 『お前。いつも見てるよな。』 『お前ら、何でも一緒で仲いいんだな。』 『自分。跡部のこと、好きやな〜。』

みんなの言葉が頭に浮かんだ。
・・・そうか。私、跡部のこと好きだったんだ。
今更、気付いても、もう遅い。跡部に気持ちを伝える手段は、もう無いのだから。
そう思うと、また涙が出てきた。
“涙が枯れるまで”そんなことってあるのか、と疑うほどだった。



大嫌いだと思っていたのに・・・。
こんなに大好きだったなんて・・・。













 

大切な人や物というのは、失ってから気付くことが多いです。私も、友達と喧嘩して、そう思いましたね。まぁ、喧嘩だけなので、自分から謝って、仲直りしましたが。
こんな風に大切な人が亡くなったり、大切な物を手放してしまったりした後、「やっぱり、自分に必要だった」と言っても、遅いんです。覆水盆に返らず、です。
・・・ん?それは、違うか!まぁ、要は人や物を大切にしましょうという話(←なんか違う)。

ところで。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが。
“ため息さえ、甘い嘘”は、テニプリゲーム「LOVE OF PRINCE」より、跡部さんの歌の「罠 〜ワナ〜」から来ました。
いやぁ、キスプリ・ラブプリは、(失礼な話ですが・・・/笑)ゲームとしての面白みは、そんなにありませんが、キャラの会話や歌は大好きですね。
あれは名曲・名シーンが多いと思います。語ると長くなるので止めておきますが、もちろん「罠 〜ワナ〜」も大好きな1曲です!